明るい教室、広々とした廊下やオープンスペース、ホテルのように美しいトイレ。一歩足をふみ入れた瞬間から、気分が楽しく明るくなる自慢の校舎です。
美しい色づかい。ウェーブ(波)を用いたやわらかなデザイン。世界の一流の家具。
10代の女性が豊かな学校生活を送るために、インテリアデザイン、視界デザインの視点から建築に携わったお二人にお話を伺います。
新校舎について、どのような点に留意してデザインされましたか?
高木学園女子高等学校の教育理念と、女子高校であるというお話を
うかがいましたので、デザインにあたっては3つの点に留意しました。まず「女性の持つ空気感」を醸し出すこと、次に、これまでの「高校の校舎」という概念にとらわれない素敵な空間を創ること、さらに生徒それぞれが自分の居場所をみつけられるような校舎にしていこうと考えました。
デザインする中で、またはこの新校舎プロジェクトの途中で難しさを感じられたことはありますか?
それはどのようなことですか?
私が目指したのは、これまでの概念にとらわれない自由で明るく女性らしい空間を創ることです。そのため、当初はそのことを全ての関係者の方々と共有していくということに難しさを感じました。全く新しいものを創りあげるということは、誰もが慣れていないわけですから当然のことなのですが、非常に多くの議論を重ねていきました。
新校舎において「女子高らしさ、優しさ、居ごこちの良さ」などをど のように表現されたのでしょうか?
校舎というものを、単に勉強のみに使う場所ではなく、一日の大半を過す場所、生活の場所としてとらえ、「学校でのさまざまな生活シーンに合った空間を創る」ということに留意しました。その際に、単にデザインだけではなく、使用している床・壁・家具の素材などにも細かく配慮していきました。 たとえば、その日・そのときの気分により使い分けられるトイレはコミュニケーションの場となりますし、癒しの場にもなります。昇降口から校舎へと導く吹き抜けと階段のスペースには、さわやかさと透明感あふれるモビールのカラフルな鳥たちが空を舞っています。こうしたひとつひとつのこだわりが、生徒たちの一日一日を心地良い、楽しいものにしていけると考えています。
「美しい」と感じる人と感じない人の違い
私の専門は視覚デザインです。色彩や形を通して社会的なメッセージをコミュニケーションするしくみを研究しています。その中で、気になっていることがあります。それは同じ音楽やアートに接したときに「美しい、好きだ」と感じる人と何も感じない人がいることです。美しいと感じる人は人生を豊かに過ごせ、感じない人はさびしく過ごします。また、歴史的にみると文化の豊かな時代や地域があり、乏しい国があります。その違いは秀れた文化の積み重ねから生まれ、一朝一夕には身につかないようです。
高校生のいまこそ、美しい空間を体感させたい
高校生という時間は人生の揺籃期です。感性を磨くためのもっとも大切な最後の時なのです。この時期に美しい形や印象に残るシーンをいかに多く体験できるかが、その後の人生を豊かにします。私はコミュニケーションの専門家として、高校生に美しく秀れた空間を提供したいと考えています。誤っても無味乾燥な校舎や権威ぶった校舎に閉じ込め、大切な感性を窒息させてはいけないと考えこのプロジェクトに協力しました。
沢山のメモリーポイントで10代の記憶を育む
ひとは人生の分岐点に立ったとき、過去の様々な出来事を思い浮かべます。そして癒やされ、励まされ、時にはつらく心をしめつけられ、明日への糧にします。高木学園で過ごす3年間は、そうした出来事に合う宝庫のような日々です。そのドラマのためには美しい舞台となる校舎が大切です。なにげなく校舎を見上げたときに目に映ったステンドグラスの鳩たち、美しい夕焼けのテラス、幅広い階段の途中で感じた一瞬の記憶が人生を豊かにします。高木学園の校舎には随所にメモリーポイントがちりばめられています。30年後に10代をふりかえったときに生き生きと想い出せるように願っています。
あたたかな思いが結晶して完成した空間
新校舎は予想をはるかに超えた完成度でした。エキサイティングな空間なのに、ずうっと前からそこに在ったように自然でゆったりしていました。と同時にこの校舎は関係者の深い思いと努力が結晶して完成したことを実感しました。この空間で高校生活を過ごす若い生徒たちが充実した日々を体験できることを確信しました。